05
私が見に来た景色
轟々と音を立てて
私は飛んでいる
先ほどまで来ていた厚い殻は
晴れの海まで来たら自然に脱げ落ちて
今は
オパール色に発光する
ドラゴンの姿にもどっている
先ほどまで手に抱えていた白く柔らかな生き物は
いつの間にか私の手の中を通り
体の内側から頭の方に
コロコロと瞬きながら
登って来ている
あの子が私の中に
明るさと緩み笑うことを写してから
私の視界には進む先の鮮やかさがはっきりするようになった
私は雲に浮かぶ城を目指している
スピードを緩めず一気呵成に飛んでいる
あの子が私の頭まで登って来て
私の目に自分の目を重ねて世界を見ている
あの子が私を通して
世界を見ている
あの子の視界
わたしの姿は堂々としなやかに翼と尾を持つ
オパールのドラゴン
まっすぐに天の城を目指す
海の上を城からの引力に引かれるように
まっすぐに
私には私の目指している先がちゃんとわかっている
この引力は私が感じているもの
理由なく体が惹かれるもの
金の装飾を背びれと尾に
弾くような乳白の肌は
私が進む先をちゃんとわかっている
遠く離れた陸地から人々が私を見ているのがわかる
私の姿は吉祥だと私を見つけたら喜ぶようになった
私は人に姿を見られることで世界に良きものを返している
私は私が目指している城の
細やかな造りや精緻なうつくしさ
天から降りてくる階層の軌道に
ほれぼれする心地を
翼に 肌に 尾にひるがえし
大海原を一直線に飛んでいく
私の見ているものは
天の仕組み
私が飛んでいるのは
天が私を呼んでいるから
あの子の明るく小さくほやほやとした光で
世界を見ている
このまま飛んで天の城にたどり着き
私は私がこの城の一部になることを予感している
私がしっくりと収まる形に
城はこしらえられてあり
私が組み合わさり石の礎に染まることで
城の働きは完成する
収まった後に、私は完成体であることを
いきてから初めての深い安堵とともにうれしく思う
あの子は私の喉元から心臓におり
まるで遠くから見ると
夜景の垢でひときわ輝く宝石のような明かりになっている
私は精緻な天の仕組みの一部になって
世界の礎に加担するオパールのドラゴン
人よ
私の吉祥をみよ
オパール 雲間 ドラゴン
海原 飛行機 手に乗るサイズのペット
Commentaires