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わたしのときめき
わたしのときめきには時間がない
時間という単位では測れない
いつ産まれた時だって
このときめきはずっと
わたしと一緒にあったし
これからも尽きずにどんどん
湧いてくる
このときめきは誰に味わわせてもらっても
とってもいいものだ
おいしい
と
うれしい
と
たのしい
と
愛してる
と
愛されている
をないまぜにして
そこにはちみつをかけて
甘くきらきらにしたような
わたしのときめき
このときめきは
わたしの金の冠
いつだってこれを頭に
髪に飾って
自慢げに暮らしてきた
わたしは見られていても
見られていなくても
ときめきの量が変わらない
とにかくきらめいている
いつでも絶頂
火山の底にいるときに
わたしは体が
赤いザクザクとした石に
なっていた
手足が動かず
熱い岩肌の下にいて
赤い色がたくさん動いているのを
見るともなしに
見ていた
声も出せず
動けず
ただ生きているとき
わたしはエネルギーを
ためていた
いつか動く時のために
じっとじっと
溜めていた
そこには女の神様の
渦巻くエネルギーが滞留していた
わたしではない方の女神が
身体中から撒き散らしていた
薄黒くギラギラとして
鈍い音を立てているもの
圧縮されたプライドや
欲望の塊なんかのエネルギーを
わたしは見るともなしに
見ていた
わたしはこの見るともなしに
見ていた
岩や女神の様子から
圧縮されたものを
どんどん外に出して
解放していくのが
自然だろうと思ったから
ときめきを
使えるような状態になったら
とにかくどんどん外に出して
圧縮されたものを
円滑に解放していくことを
やっている
今は溜めるよりも
出す時だ
わたしのやり方で
出して出して
円滑にエネルギーを
解放していく時だ
すっかり出し切った後には
わたしのきらきらしい
ときめきも
出尽くして
後には素朴なものが残る
使いの良い手の触りが良いもの
鰹節のような
生き物の法則に馴れたもの
静々と発酵するような
いいもの
ぎゅっと集まった旨味を手に
わたしは2回目のときめきを
撒き散らし始める
今度は純粋な光のエネルギー
ただただ光る
水色の風のように
どこまでも
せき止められることのない
どんどん届いていく
わたしの喜び
幼い頃のときめきとは
違う
私の喜び
これを撒き散らして
今度は私の喜びに
呼応するものだけが
私の周りに集まってくる
私はそのことに
うっとりと肩を寄せて
いつまでも
風が吹くごとに
この喜びが私を包み
私が喜ぶとまたそれに
世界中から喜びが
集まってくる様子を喜び
美しいブレスレットが
きらめくように
ひとつの方程式を
宇宙に浮かべて
しあわせを味わっていた
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