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わたしは踊る
片足立ちでくるくると
青いたすきをかけて
わたしは踊る
潮流にも流されず
片足立ちでくるくると踊る
頭には金の塔のような飾り
ては胸の前で合掌
朗らかに時折声を通しながら笑
くるくると踊る
踊りの基本姿勢は
縁を繋ぐことにある
わたしはくるくると
動く時の
一瞬の角度ごとに
結ばれた縁を切り
またその瞬間に
縁を繋ぎなおしている
踊る楽しみは
体が動くことの
生き生きした感覚と
1秒前と違う方向を体が向くことで
グリッドが変わり
世界の新しい側面に
一瞬ごとに
移動していること
左と右を交互に向く時
わたしには世界のバリエーションが
増えたように感じる
瞬く間にたくさんの世界が創出されて
わたしは踊るごとに
その一つづつと
手を繋ぎなおして
ステップを踏んでいる
時折この縁繋ぎを
大きな大きな白い毛の犬に
手伝ってもらう
わたしが踊っている間
腕置きの場所から現れて
わたしが体を持たせられる
一番いい角度から
添ってくる
バとマの合わさる音から
その犬は生まれてくる
大きな大きな白い犬と
ある時
洞窟に出かけたことがあった
わたしは入ったことがなかったので
犬に手を置き
入るべきかどうか
胸の内に問うてみた
するとその瞬間
わたしの眼前に
丸い眼の赤くて黄色い
土地の神様が
洞穴から出てきた
牙が生えているが
これはデザイン上こうなっているだけで
危険なものではないことが
わたしにはすぐにわかった
神様はガチャガチャした飾りをたくさんつけていたが
カラフルな花束のようで
煩いようなものではないことも
すぐにわかった
神様はわたしに
洞窟に入ることはないと教えてくれて
今後もわたしに必要のない場所には
ちゃんと入らなくてよくなるように
おまじないを教えてくれた
縁を繋ぎ続けるわたしには
手を結ぶ相手がその都度現れるが
必要のないものとの
繋がりができないよう
神様が守ってくれているのだった
踊り続けるわたしの足腰は
たくましいパワーを持つ
芯がしっかりした
支えになった
大きな白い犬を添わせて
くるくると
縁を繋ぎ続ける
わたしにはたどり着きたい先があった
くるくる踊ることで
足もとに回旋する水の渦を呼び
高くにある岸辺に
飛び上がって行きたかった
白い犬が一緒にいてくれたこともあり
なんども繰り返し目指していたら
とうとう高みの祠に
飛び上がることができた
わたしはいつも
爽やかでいい気分で踊ってきたが
この時は興奮して
グッと握りしめた手を掲げ
自分の成功を天に知らせるよう
声をあげた
祠の小さな扉を開いて
わたしの金色に光る
小さな仏像を
手に取った
この時この瞬間
わたしにしかできないやり方で
わたしは自分の神聖さを
受け取った
手で半顔を抑えて
溢れる涙をこぼしながら
わたしはだんだんと
体が金色に戻っていくのを
感じて
そのありようを
見ていた
わたしはいつだって
自分を追いかけてきたが
金色の神聖さを思い出して
肉の皮が剥がれた今
どこにもいかなくとも
ここにわたしの
宇宙を見る軸が
完成していたことを
思い出した
思い出して
本当に良かったと
安堵する気持ちが
だんだんと
薄れ
わたしはここに祀られる
金色の像に戻り
天にのぼっていく
毛のふさふさした白い犬を
穏やかな心地で
遠くに眺めた
わたしは
金の像に
戻った
この土地は
いつまでも
安泰だ
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