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  • sunao

18




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わたしを取り巻くもの



南国の木が葉を茂らせている場所で

わたしは浜に出て来た


腰にはパレオを巻き

長い髪を肩に降ろし

夕日の時刻に

砂に立っていた


南国の植物は

わたしにとって愛すべき形

楕円形の葉がしなり

連鎖している形を

木に彫ったもの

レリーフを頬に当て

うっとりとその

曲線を愛おしんでいた


頬に当てるたびに

その喜びが訳もなく

わたしの上の方に湧いてくる

嬉しく 涙が出るもの

この気持ちは

人になかなか説明することが難しい


うれしい


よかった


安心


泣きたい


ありがとう


愛おしい


せつない


執着


穏やか


さみしかった


惚れている


儚い


ときめき


それらが全部ないまぜになって

甘やかな香りの木の樽に

熟成されているような心地



わたしが心を明け渡しているもの

いとしさの象徴が形になっている

思い出すごとに

心の中で頬ずりし

有ることに涙が滲んでくる



わたしはうれしい時

そしてなんでもない時に

腰をくねらせて

ダンスを踊る

短いダンス

わたしの中の愛の世界への

挨拶のような

短いダンス


わたしは意志の力があり

芯の強さが有るので

多少のことでは揺るがない

海に入って

深い海ぞこに

裂け目を見つけ

目を凝らしている時も

わたしはこわくなかった


そこにどんな恐ろしいものが隠れていようとも

わたしには


「そういうものも、ある。

有ることをわたしは知っている。

わたしが否定したとして

この世から消えて無くなるものではない。

そのままあればいい。」


そんな風に思えるのだった


そうして思ううちに

わたしには

怖いものが

わたしにくっつこうとすることを

止めたと感じるようになった


海溝に暗闇が広がっていても

わたしにとっての怖さではなくなった





わたしの芯は

しなやかに逞しい

夕陽を浴びながら

オレンジ色になったわたしの体や

わたしの髪が砂浜の大地に溶け込んでいく


わたしが愛おしんでいる

植物のレリーフは

永遠の象徴

わたしの心は

永遠を思う時に

愛しく

切なく

嬉しく

悲しく

穏やかな気持ちになる

わたしに一番の思いをわかせるのは

この永遠だけ



今日も太陽に向かって

わたしの中心を開きながら

愛おしい気持ちを満遍なく

オレンジに染めてもらおう


ここはわたしの愛する

砂浜

南国の葉が茂り

足元に波が打ち寄せる

夕陽に染まり

わたしをオレンジに溶かす

景色の中に溶けたわたしは


いつか話に聞いた

地球のマザーのことを

思い出しながら

口からふぅと

一つ息をこぼした

マザーの草冠は

わたしの愛する永遠の象徴


砂に溶けながら

だんだんと星がみえてくる頃

地球の中から出てくる



大きなマザーが

じっとこちらを眺めているようで

またわたしは

はぁと息をこぼし


大切にされている

安心した気持ちの

揺りかごに

寝転んでいた

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