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わたしを軽くするもの
雲の絶え間から
差し込む光の純粋さは
わたしの体を染めるに
ぴったりのものだ
儚く去ってしまうかと思いきや
また太陽の角度が変わるごとに
新しい光を投げてよこす
思春期の少女のような
身勝手さはなく
月に腰掛ける女神が
長い衣の裾を
なびかせるような
軽さ
そう行ったものが
わたしを表す言葉たち
粒子の細かい
シルクのパウダーが
静かにうねるようなライン
ほの明るいきらめきが
手のひらから立ち上るような
儚さと質の良さと
見るものの胸に
魔法をかけるような
淑やかさ
パールの飾りを
耳につけている時
しまうための置き場所を
銀細工でこしらえる
大切なものを置く場所
大切に用意されなくてはいけない
わたしが選んでいるものは
ないがしろにされるものではない
力強さよりも
たおやかさ
派手さよりも
質の良さ
重さよりも
軽さ
常に弱い側の力の使い方を
わたしは大切にして来た
このやり方はわたしの体に備わったもの
わたしは静かに
世界の土台を動かしている
一度に勢いよくではなく
星の砂粒が
一つづつ
壁の隙間に吹き込み
時間がゆっくりと後押しする
静かな砂つぶは
壁の基礎を崩し
重力と引力が
土台を必要な向きに
動かしてくれる
静かな砂つぶは
風とともに吹き込んで
世界の土台を
ちょうど良い方向に
向き直させる
土台に乗っている方には
気がつかないくらい
自然に静かに
静かな力で動かしたものは
組み合わせの一つ一つが
きちんと精密で
うつくしい
そのことがわたしを喜ばせる
細かく震えるほどに
わたしはよろこばしい
月に女神が腰掛け
衣の裾をなびかせながら
手のひらに丸い星を
載せている時
わたしはわたしがとても
大きくなって
星をすっぽり包んでしまっているように
感じる
静かすぎて
かえって
音が見えるような
心地
本当の静寂は
とても賑やかしい
何にもないということは
こんなに何かが溢れている
星の表面の水に
楔を打って
わたしはこの丸い星が
破壊されいくのを
止めようとした
いつもは静かなわたしが
勢いよく動いたために
わたしの細胞たちは
驚いたようだった
なりふり構わなかったから
賑やかしく聞こえていた
静けさの音も
その時はプツリと途絶え
スッなくなった
わたしが楔を打ち込んだ
丸い星の表面の水は
少し揺れて
そこから避けていくのを
諦めたようだった
いつもは静かなわたしが
勢いよく打ち込んだ楔の影響は
星だけではなく
わたし自身の中に
ズシンと響いた
わたしは
わたしの中に響いた音が
風に吹かれて
ほろほろと崩れ
端の方から
小さな星になって
わたしの体の中に広がっていくのを
見ていた
一度のズシンは
わたしに
静かに光る
星々を与えれくれた
いとおしく体を抱きしめながら
月の腰掛けて
次にやってくる
ズシンのことを夢見ながら
わたしは
静かに目を閉じた
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