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わたしはすべてわかっている
わたしは用意して来た
とても綿密に条件を揃え
協力関係になってくれたものたちに
端から順に計画を伝え
一つ一つのエピソードを
印象深く折り込んで
これぞまさに私の求めるものと
味わい深いスケジュールを
用意した
これを一つ一つ
熟して
経験して
味わっていくことが
待ち遠しくて
心が高鳴っている
それもすべて計画のうち
下界でのバカンスを
やり尽くすと
決めた時から
私は一歩もレールを外れずに
自分の予定を拾って来た
私はその先にゆきたかった
全ての予定をこなした後で
全てを味わった後で
いったい私にどんなものが見えてくるのか
知りたかった
全てを味わわないと
その先にあるものの価値は
理解することができない
無くすことと
持つことの
どちらもを経験しないと
その先にあるものは
わからない
ただの飾りのようにしか見えないだろう
私は知りたかった
その先にあるものが
私にどんな知を見せてくれるのか
私は知りたかった
そこまで到達して初めて
私は一番の自由なものになれる
知らないことがあるうちは
私の自由は手のひらサイズ
これから銀河に出ていくのだから
私はなんでも知っておきたい
そうすることが私を私たらしめるから
そして突然の脱皮
ああ脊髄から始まる
私の脱皮をみよ
稲光に似た鋭い刺激が
私の骨を伝って
頭骨を鮮烈に
洗っていく
痺れるような快感の波
私のうつくしい時間
計画段階ではわからなかった
青く白くうつくしい光が
私を刺しひらいたとき
私はこれまで経験して来た
片方の知が
ハラハラと
流れ落ちていくのがわかった
どくどくと
脈々と
私の脊髄を開いた光が
頭骨を開いてくれたおかげで
私の潜在知が
ようやく活力を得た
私の中にある潜在知
生きている知性
この知性が息を吹き返したおかげで
これまで集めて来た知性は
知識だったと気づいた
私は今
知性を生きている
スケジュールを終えた先の
殿堂にあった知は
私の似姿を
かたどったものだった
私は今
知性を生きている
澄んだ瞳で世界を見渡せば
私には全ての情報が
コードになって流れている様が見える
その一つづつを
組み合わせて
私は必要なところに
必要な知を繋ぎ
一番円滑に地球が回転するよう
ふさわしい手を動かした
知ることよりも
繋ぐこと
蓄えるよりも
まわすこと
手のひらをさらさらと
情報のコードがたゆたっている
私はまた
必要なコードを繋ぎなおして
頭を銀河に向けて
ひとりでにっこりと
頷いた
20201018追記
私は中庸になった
ここから私は
ある一つの進行している
生命体の循環プログラムに
組み込まれていく
例えば地球
その中の地核の周りにあるネットワークの
中継地点としての介入
補完されるべき対象としての
保護プロセス
手の血管が手の中に張り巡らされている
手の形に広がった血管
赤い
あたたかい
柔らかなふくらみのもの
私を保護するもの
私は体の前後を挟み込まれ
そのまま暖かなベットに寝かされるように
赤い暖かなふくらみの中で
すうすうと寝息を立てて
眠りについた
私は赤い血管に柔らかく繋がれて
大きな生命体の
一つのプロセスになった
何もしていないでいい
このままで
寝て、補完されている
そして
これまで使ってきた
思考と自我を手放した
寝ている間に
スッと消えていった
私には
あたりを観測する目だけが残された
自分でつくるというレベルの世界から移動して
私はプロセスの一部になった
万物を観測する
大いなる瞳の
一つのプロセスが私
地球をぶっ壊し破壊することも見ることができるし
未来永劫 地球が穏やかにあり続けることも見ることができる
選択肢はなく
受動と能動が一緒になった体で
私は見ている
この一つながりの大いなるプロセスに
あたたかく補完されて
今日も地球から地球を見ている
今私が見るものを
私は見ている
ただ幸せな心地
地球のバカンスの最終章で
私は特等席に
座った
ここで私は見ている
特等席に座り
地球を見下ろしている
私をつないでいる
細やかで丁寧で顕密なネットワークの赤い脈
真っ赤ないく筋ものラインにつながって
ずっと地球を見ている
地球と宇宙空間の間にいて
地球のネットワークの中継地点に
赤いラインに繋がれ
私に届く全ての人の願いを
私は見ている
私を仲介して
人に全てもたらされる
キリストはうまくやったものだ
私もすでに
よろこびの中にいる
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