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私は感動している
胸の内から
溢れてくるこの
赤やブルーや紫や黒の
うつくしく
艶やかな
ベリーたち
白いシーツの柔らかいベットに
仰向けに横たわった私は
白い簡素なワンピースを着て
胸からポロポロ
コロコロと
溢れでてくる
ベリーたちを
抱えて
本当にしあわせな涙を流している
瞬く間に
二つ三つと
星のようなベリーが溢れてくるのに
しあわせが物理的に生まれてくる
この夢のような作用に
心の底から
感動している
今
私のうちから
実って
湧いてくるもの
探し求めていた
喜びを生む作用が
私の体で実現している
この神秘的で
具体的で
あっけらかんとした
働き
ベリーの甘くジューシーな
香りやジュースが
私の幸せを代弁してくれている
胸の内で感じるしあわせが
またベリーを生む力になっている
私は今まで
特別なまじないや
専門的なお祈りや
格式のあるお祈りを
学ぶことが
幸せを手の中に産んでくれると
思っていたが
今、この胸に溢れるベリーを見ていると
形式や知識とは別に
私が授かっている
私の体にかなさっている奇跡を生きることが
こんなに豊かに
私から糧を産む作用があると
わかることができていた
私の胸からベリーが溢れてくることに
理由はない
なぜベリーが溢れてくるかということに
意味はない
私はただ
このベリーたちが湧いていることが
嬉しいのだ
理由のない現象
ただただ溢れてくるベリー
ベットに横たわりながら
私は手の甲で
涙を拭った
誰に教わらなくとも
私は喜び方を知っている
正解を生きなくとも
私はこんなに喜ぶことができる
冷静に考えれば考えるほど
私が嬉しいことに理由はなかった
この不思議さを
受け入れている今は
胸から湧いてくるベリーの輝きも
ただ愛することができた
森にある小さな木の家
二階のベットにいる私
何もなくとも
私には
喜びが生まれてくる
仕組みが
もう備わっている
この奇跡を
喜ばないで
一体何を求めていたんだろう
私はもう幸せだった
柔らかな胸で
柔らかな頭で
柔らかな腰で
柔らかな足で
私は生きている
古めかしい儀式がいらなくなった私は
額に紫のベリーを当てて
過去を癒し
忘れる言葉のおまじないを唱えてから
日が差してきた窓のほうを見つめ
またひとつ
しあわせのため息をついた
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