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  • sunao

31





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私の体は星の渦


真空の中に

どれだけ離れた距離にいても

広大に見える

星雲があった


その星雲を遠くから眺めているだけで

私の体は

まるで誰か尊敬する人を

恋い焦がれるような

たまらない気持ちになった


うすむらさき

黄色

ピンク

オレンジ

そのほか、もやもやとした明るいグレーのガスが

絡まり合っている


まるで大きな観覧車が

側面いっぱいに

精緻な星をちりばめて

宇宙空間に

ひそやかに

設置されたようだった


目を閉じると

いつでもあるこの

広大な星雲は

重力のない空間にあるはずなのに

その重厚さや

巨大な迫力

深遠なエネルギー

そして

色味の爽やかさで

私の体の中に

あった


星雲の動きは

目視では観測できない

一目見ただけでは

活動しているかどうか

わからないくらい

時間を忘れさせる進み方をしている


回転する動きは

1週間計測して

だいたい5センチほど

ほとんど動いていないようだが

この星雲は

メリーゴーランドのように

賑やかしく回転することではない


自分の広大な円の輪郭の中で

その密度を高めて

質量を増やしていくことだ


巨大な星雲は

そのすぐそばにたつと

どれだけ

首を伸ばしても

天辺が見えないくらいに

大きい


見た目の繊細な色のふくらみ

実際の大きさ、重厚さ

軽々しく

人の手で扱うことは

叶わないものだ



こういった

果てしないエネルギーの集まりを

人間社会では

流通のための資源と考える向きもあるかもしれない


しかしこの星雲は

眺めて称えられる対象であって

消費されるようなものではない



ガスの彩りを

観察すると

砂つぶのような

きらめきが

おぼろげなグレーの雲の中に

たくさんあることがわかる


大きく深遠な星雲は

小さな砂つぶの集まりでできている

手を差し入れると

少しひんやりとし

ガスのわずかな感触が感じられる


身を入れて星雲と同じ向きに

内側から宇宙を眺めてみた


そうすると

私の体が

溢れるほど潤沢なエネルギーに

背中から包まれて

光る砂つぶが

目の先で

チカっと瞬いた


巨大な星雲の一部であることを思い出した私は

分離していた状態だった時の

星雲への憧れは

もともと一つだった自分を

いつくしむ気持ちが

元になって

恋い焦がれるような

状態だったんだなと

瞬く光を見ながら

思い出していた


遠くから眺めるだけで

その重厚な存在感に

皆が自分自身をわずかに律する

姿勢を伸ばすような心持ちになる

そんな厳かな影響力があるおかげで

皆がそれぞれの道を踏み外さないでいる

そのことも

私はよく知っていた


ゆっくりと

ゆっくりと

測ることをやめた時計の速度で

星雲は活動している


千年を生きている巨木と

どこかにた印象を感じさせるその在り方

精緻な柔らかな砂つぶや

ひんやりと儚いガスが

その主な成分だとは

遠目からは想像もつかない


私このバランスを気に入っている


小さなものたちでできた

大きなものが

目に見えないような速度で

進んでいる


ヤワヤワとしたガスの中で

私は宇宙の方を見ながら

この

お腹の中が痺れるような

絶妙なバランスに

改めて

惚れなおした


こうでなくては

私の天地創造は

はじまらない




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