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愛を待っていてもいい
開け放たれた空の下で
私は額に風を感じ
両手を広げて
光を受けていた
ピンクとオレンジを混ぜて
そこに白を混ぜた柔らかい光が満ちる場所で
私は光を受けていた
とてもわかりやすい形の愛
それは風景に例えると
こんな風
身も心も
輪郭が淡く
何かに抱きとめられているように
体からは力が抜け
ゆっくりと呼吸している
許されていることと
許していることが
ちょうど釣り合うバランスで
私はここに
柔らかく立っている
あいされる
ということの答えが
私
許される
ということの
意味が
私
ひらかれる
ということの
表現が
私
ピンクとオレンジの混ざる
夕日のような時刻に
私は愛されてここに立っていた
耳元に
首筋に
手をやると
髪のような
緑のツタのような
さらりと落ちるものがあり
肌には愛で溶かされたあとがあった
指でふれると
そこは
新しい次元の広がる入り口になっていて
私は記憶を辿って
その入り口から
新しい次元に
入っていくことができた
ここでは
体をなくして
一つの光の粒で過ごしている
どこに行っても
後ろには
私の動いた軌跡が残り
自分と他人の比較に気がつかない
たった一人でいながら
個体で分離している印象がない
そんな世界だった
ああ
ここでは体がないから
触れられることや
抱きしめられることが
感触として残らないんだなぁ
と独りごちて
自分が残した軌跡を辿って
また元の
夕日の時刻の
草原に戻って来た
私は愛されることに抵抗がない
そういう風にできている
どれだけ人に
可愛らしいと褒められても
愛らしいとささやかれても
私はなんなくそれを
体に染み込ませることができた
私にっっては
たやすく簡単で
当たり前のことだった
私は愛されることを
ただやっているだけで
そのやさしい感触や
体がふわっと軽く
溶けていきそうな心地を
味わっているのは
私のいつも通りのことだった
うつくしいピンク色を見ていると
ピンク色のやさしく可愛らしい気持ちになるのと
同じ作用で
私は私に対面したものが
私を愛するようになることを
自然なことだと
思っていた
そしてそれは一度も違うことがなかった
夕日の色の丘に
私はどさりと倒れこみ
一息ついて
愛されている感覚を
身体中によみがえらせてみた
体によみがえらせるということは
心が先に
それでいっぱいになるということ
心からもれて
溢れた感覚が
体にだんだん満ちて
いっぱいになり
私は
目から
溢れて来た
愛されている感覚を
つるつるとこぼし
頭の下敷きになっている
草たちに
ぬぐってもらった
きっとここにはこの後
天につながるながいながい
やわらかな気が伸びるだろう
私よりも
果てしなく高い
雲の上にかかる梯子のような
記念樹のような
緑の木が伸びるだろう
私はその木が
私の「愛されていることを」
記念するためのレリーフのように感じて
少し誇らしくなり
目を閉じて
また愛される感覚を体に注いで
今度は
身体中から
その愛を
溢れさせた
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