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わたしは花まつりの
主だった
森の空き地に
このまつりの時は
大事な地脈と空の脈をつなげて
地面を踏みしめておどる
まつりの元締めはわたしだった
黄色い丸く大きさのある花を
頭上に乗せ
まるで
頭のてっぺんから
ふくよかな黄色が実り
花開いているように
飾るのだ
そして黄色い
生地のしっかりした衣を着て
裾をまくり
赤い紐でたすき掛けをして
ふくらはぎの筋肉が
しっかりとわたしを支え
大地につながっているのを
感じるのだ
花まつりでは
木の鉾を
どんと地面に打ち付け
空への合図を送る
どんどんと地面を突き
空の空間に
今ここに大事な催しがあるのだぞと
教え知らしめる
わたしは威厳を持って
その役に当たっている
わたしがこの森のまつりの敷地に
鉾をどんと立て
空に合図を送ると
天と大地をつなぐ
稲光がまっすぐにこちらに落ちてきて
大切な約束を
「ここに表明する」
と、空の方からの意思表示がある
そして
そのあと、稲光のラインを目指すように
大地の奥底から
大きな黒と緑の龍が
現れ出てくる
どごごごごゴゴゴと大地の奥から
地脈を司った
代表が大きな体をうねらせて
わたしと稲光の場所に
やってくる
ゴウンゴウンと音を立てて
わたしのところへ
地の龍がやって着た
わたしは龍と目を合わせ
この年のまつりの結束を
確約すると
鉾を地面について
ひらりと龍の首に
飛び乗った
龍の角を両手で捉え
地の脈を手中に携えると
わたしと龍は
くるりと旋回し
空の方からの稲光の挨拶を返すように
まずは光の形に巻きつくように
飛んだ
稲光と龍の体が
触れて感化し、
稲光と龍との調和が
無事に終わった
それからわたしと龍は
稲光の伸びている先の
天の方へ
上昇していった
ゴウンゴウンと音を立てて
大きな体を燻らせて
わたしと龍は
風を起こしながら
稲光のラインを
追っていった
わたしはこの役を果たす
胸の内には
誇らしさと
喜びがどんどんと
わたしに力を与えている
腹の奥から湧いて
体を満たすようだ
黄色い服に
包まれた体は
その内側が
ぐんぐんと循環するエネルギーでいっぱいになり
体の外へ
黄色い光が
ゆらゆらと立ち上っていた
わたしのこのパワーを止めることは
できない
なぜなら
こうやってわたしが
黄色い光をみなぎらせているのは
天と地と宇宙の意思だから
妨げられることは
許されていない
わたしは上昇する体と
どんどんと鼓動を打つ胸と
たくましく鉾を結んだ腕と
煌煌しい目の先で
確実な守られ方をしながら
この役を全うすることを
万物にかたく約束した
上昇する龍に乗り
稲光の発出している雲までやって着たわたしは
稲光の始まりの淵に
鉾を手に
飛び降りたった
龍はくもの周りを
ゴウンゴウンと飛びこちらをしっかりと見ている
わたしは龍に向かって頷くと
ヤッッ と声をあげて稲妻の中に
飛び込んだ
わたしの体よりも何倍も太く
広く大きい稲妻の
光の柱の中で
わたしは鉾を手に
頭上の花を、振り
一枚、また一枚と
花びらを振り落としていった
花びらは
一度ひらりと裏返ると
全て稲妻の中に消えていった
わたしは稲妻の始まりに居て
鉾を構え
黄色い甲冑をつけた
武将になった
そして
厚みのある甲を振り
体位を構えてむすぶ印を作った
腕を振り
足を構え
肚を決めて
数々の印を
体と鉾で
結んでいった
そしてだんだんと
下へ
印を一つ結ぶごとに
地上の方へ
一段一段
降りていった
ビシリ
ビシリと
構えて結ぶ印の
一つ一つが
わたしを完璧な形にし、
稲妻の中に
印を結んで写した文様を
描いていった
所作の合間に見上げると
稲妻の内側は
すっきりと円柱の空間に落ち着き
ビシリ
ビシリと
描かれた文様で
埋め尽くされていた
わたしはこの役を
とても誇らしく
体現している
誇らしく
肚のうちから溢れている
この黄色いオームのエネルギーが
あたたかに
わたしを律し
支えてくれている
わたしはやがて地上に到着するが
この黄色い肚の光を
失うことは決してない
わたしは
天と地とおびただしい数の印を結んだ
柱の化身となり
ここで
全てを解放する
肚の内から
宇宙全体にひらけて
誇らしさと自信を
万物に宿らせる光となる
わたしは
役に
とても
満足してるのだ
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