私は山の中にある
つり橋を渡っている
橋の渡り口と
橋の終わりは
山の薄暗い木に囲まれて
歩いてきた道と
歩いていく先が
よく見通せない
ちょっと困った気持ちで
谷底の清流を眺めている
私はここからしっかり自分の道を
歩いて行かなくちゃいけないんだけど
なんで見通せないのかな
困っちゃったな
という気持ちで
大きな石がコロコロしている
川の水を見ている
川の水は
私の気持ちとはおかまいなしに
曇りも淀みもなく
止まらずにサラサラサラサラと
あっという間に流れていく
きれいだなぁ
川の水を見ていると
私の心は不思議とストンと落ち着いてきた
歩いてきた道も
これから歩く予定の道も
なんだか心が開ける心地がしないから
今はこうやって
サラサラ流れる川の水を
みているのが
一番ホッとできるなぁ
サラサラサラサラ
サラサラサラサラ
さっきまで心にあった
「自分でやらなくちゃ」
という気持ちがだんだん無くなってきた
川の水は
重力に従って
ただ上から下に
流れているだけで
流れる義務もないし
命令されてるわけでもない
ただ自然法則にしたがっているだけなのに
こんなに私の胸の内をきれいにして
洗ってくれている
私はこのきれいな感覚
好きだし
なんだか懐かしいような気がする
そうやって川を覗き込んで
下を見ているうちに
私の体は
なぜか急に川におりたくなった
これからいく道をやめちゃって
ドボンとここから川に飛び込みたくなった
そして
ふっと一呼吸置いて
私は高い山のつり橋から
清流に引き寄せられるように
飛び込んだ
じゃぶんっと
水面から
水の中に体が滑り込んだ
水は清々しくて
私は自分の中に溜まっていた重たい気持ちが
体の芯から
表面から
どんどん出てきていた
それを川の水が勢いよく流れる中で
分解して
清流に還元してくれていた
どれだけ流れても
私は軽々とした身体で
スイスイと流れに沿って
泳いで行った
いつの間にか私の体は
しなやかな水色の光の
魚になっていた
体の反射運動で
苦もなくこの
清らかな水の流れを進んでいる
魚の体は
すごくのびのびしていて
私は自由と感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた
川はやがて
岩のゴロゴロした場所から
海に出た
私はそこで
また体が変化したのを感じた
私は龍になっていた
海の水の中でぐるぐると渦を巻き
海流と戯れ
伸びやかに水面から空中へ躍り出る
緑の立派なひげを持つ
龍の本質を表していた
私は何千年も生きた
太いエネルギーの龍だった
手に持った玉は白く
私の手や爪に包まれて
気持ちよさそうに光っている
私は龍である自分の役割と
どこまでも自分の采配で
自分の役割をこなしていい自由を
しっかりと思い出していた
誰かに命令されても
従わされてもいない
私は龍として
自分の役割を全うするだけだ
地球の極
宇宙の始まり
大気圏を超えたあたりまで飛び続け
そこで私は翻って
地球を見た
私はここの領域を任されていたのだった
まずは大地の龍から呼び起こして
各地に伝令を走らせよう
順番に土地の力を呼び覚まし
一番に地球が輝くまつりに合わせて
私の采配で良きものを踊らせよう
私は思い出した
そのために
ここにいるのだった
私は
私の役割が
思い出せて
とてもとても
嬉しかった
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