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ここで長い時間を過ごしていると
私は私がこのお寺や
古い仏像や
あたりの土地の力が
自分と一体になったように感じる
私は長く歴史を生きたので
いつの間にかそんな風に考えるようになった
長い時間の中で
木の柱が黒く深い色に変化するように
私の魂もだんだんと
なめらかに深く
時間を忘れさせるような
落ち着きをまとっていた
私は座布団に座して
幸せに時を過ごしてきたことを
味わい振り返っていた
座布団に座って
私は自分の中心が下に下に
深く根を下ろしていくのを感じていた
細く長い魂のひもが
地面に潜り
下に下に
深く深く
降りていくのを感じていて
じっと目をつむり
大事なことを
考えているような雰囲気で
私は自分の核が
だんだんと地球の核に触れに
降りて行っていることに
気が付いた
そういう時は
じっとしていなくてはならない
じっとして
自分と地球の気配に
耳をすます
降りて行った私の核は
地層をいくつも潜り
赤茶色の土や
岩の層や
骨の集まりが埋まっている場所を超えて
降りて行った
冷えた土や
暑い地脈や
硬い鉱脈や
薄いプレートの層を
順に潜った
そして
マグマがたぎる赤くて暑い場所を通り過ぎて
甲羅ががっしりと組み合わさっている
攻殻にやってきた
攻殻の表面を撫ぜると
一つ割れたような筋がひらき
そこから手を入れて
中に滑り込ませた
そうしたら中の方でも
私の手を握るものがあって
するんと
内側に引っ張り込まれた
私は地球の核と
握手をしていた
私の手を握ったのは
私にそっくりな
もう一人の私だった
もう一人の私は
私に
地球の核の中には
また地球があり
ちょうど入れ子構造になっていることを教えてくれた
ほら
と行って
核の中で
ポカリと浮かぶ
青い地球を
指差し見せてくれた
私はまじまじと
自分がいるはずの
青い地球を見た
長い長い時間
過ごしていた
濃いいろの木のお寺を思い出した
あの中で
座していた時は
自分がこの青い細かいものがたくさんで出来上がった星に
自分がいると
思い返す時間がなかった
目に見えるものだけが全てだった
だけど今はこうして
自分のいる星の
全体を眺めている
こうやってみると
長く寺に座っていながら
私はなんときれいで
輝く場所の中にいたのだろう
自分がまるで
大きな大きな
体いっぱいを使っても味わいきれないような
素晴らしい贈り物をもらった気持ちになった
生まれる前
体がなかった時には
こんな風に
感じることはなかった
「体中で味わう」
「体中で味わいきれない」
なんて感覚はなかったから
私はきっとこの地球や自分がいる場所の
大きな存在感や価値を
体で味わうために
今の体を持ちたいと願ったのだろう
なんと大きなプレゼントだろう
私はここで
目的を果たしたような気持ちになって
急に満足感が押し寄せてきた
そうしたら急に眠たくなって
もう一人の私に見守られながら
地球の核の中で
腕を胸にキュッと寄せて
赤ん坊のような格好で
パタンと横になった
もう一人の私は
満足げに
私を見つめて
そして
また地球を見て
ウンウンと
頷いて
にっこり笑った
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