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私は
深い海の中で
地底から続いている
岩壁の一部になって
ここでじっと息を潜めていた
じっとしていると
私は
すごく
いい感じになる
動かず
ここで
岩肌が
私の後ろにずっとずっと
大きく広く山のように続いているのを
感じている
岩の中には
なににもならない
なにも感じられない
石が詰まっているかというと
実はそうではない
この巨大な岩壁の中には
おびただしい数の
地脈が張り巡らされている
私の体の後ろに感じる
この岩壁の脈
岩の中を方々に伸びて
いろんな情報を
私に伝えてくれている
じっとしていながら
私はこうやって
知識がやり取りされているのを
面白く感じている
私はこの
岩壁の揺るぎない巨大さが好きだ
長い長い時間をかけて
海の中に隆起し
長い長い時間にも
崩れることのない強固さ
長く変わらないことは
私にとっては豊かなこと
1番に良さを感じられる
重要なことなのだ
私の楽しみは他にもある
それは
この岩肌の中にある
脈を活かして
海底火山の噴火を起こすことだ
荒らしたり
攻撃したりしたいのではない
私は噴火を起こし
火と
石と
熱と
ガスとが
爆発する働きを使って
地続きの大地を
大きく揺らし
その振動と
爆発と
熱の激流で
覆いつくし
溶岩を溢れさせ
今あるものを
ダイナミックに
浄化するのだ
溶岩石に
全てを
包み
壊すことなく
浄化する
表面に増えてしまった
余計なものを
解消するために
噴火をして
浄化して
無くすのだ
自然のものたちは
どんな浄化の後も
必ず再生する
自然と調和のないものは
再生しない
基準がはっきりしている
再生しないものは
その時無くなっても大丈夫なものだったことがわかる
噴火の揺さぶりがじわじわと
どんどんと響き
爆発の噴火が起こり
溶岩が海底に
そして届く限りの地表に流れ
表面の凹凸を隠していく
無くしていく
浄化していく
必要な場所に溶岩が行き渡り
かたい石の大地が出来上がった
そして徐々に
草花の種が
風に運ばれて
届き始めた
再生のための準備が
私の担当外のものたちによって
始められたのを感じると
私はまた
海の岩肌に戻って
成果を見つめ
仕事の完了を迎える
私は岩や
地脈や
噴火の担当なので
その大仕事が終われば
あとは
岩肌からするりと抜けでて
人魚の体で
方々の海へ
遊びに出かける
この担当制が
私は気に入っている
自分が本当にできること
自分が本当に
やりたいと
動機を感じること
それ以外は
私が出しゃばらず
他の生命の担当員たちが
それぞれに
才能と動機を持ち
地球の活動を進めている
私は一担当員に過ぎないが
皆、組み合わさってこそ
能力が生きるので
こうして岩にじっとしていたり
終えてから人魚の体で
泳ぎ回る
このルーティーンを
本当に良いものだと感じている
担当のことだけは
常に愛のモチベーションがあるからだ
私は決してここを履き違えない
愛のモチベーションが起こらないことを
誰かのためにとこなしてしまっては
実のところ
誰のためにもならないと
私は学んでいる
誰のためにもならないことは
誰からもモチベーションが湧かない
それには手を出してはならない
私はこのことにおいて
完璧な調和を感じる
必要なところに
必要な才能と
モチベーションが配置され
お互いに補い合い
担当しあい
それぞれの愛しいルーティーンを
過ごしている
私は
私にこの
担当が与えられていることに
感謝している
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