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  • sunao

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わたしはなかなか満足しなかった


わたしを心から夢中にさせるおもちゃは


これまで一つもなかった


だからわたしは


新しいおもちゃを手にしても


それの面白さを味わい終わると


飽きて、そこらに放り投げた



たくさん集めたけど


飽きてしまったらわたしにはなんの意味もないおもちゃたち



集めることはすぐにできるけど


その先はなかった



わたしはある時


一つ手にとったおもちゃを


自分でも作ってみようと


思い立った










なんてことない


ぬいぐるみ


見るからに簡単な作り



手元にある材料で


同じようにパーツを合わせて作り始めた


ぬいぐるみをお手本に


同じようなぬいぐるみを


それはとても難しかった


今まで、ブンブン振って放り投げていたものを


自分の手で組み立てるのは


遊んでいる時には


わからなかった


手間と時間と技術が必要だった





わたしはびっくりした





そして

夢中になった



自分で作る時には


すでにある価値観に合わせなくていい


おもちゃを買うときは


わたしじゃない誰かが作った世界観を


選んでいた


今はそうじゃない




わたしは1から自分のいいと思うものだけで


作っていた


わたしがいいと思うもの


わたしの手が触りやすいもの


わたしがしあわせになるもの




わたしの世界を表すものとして


最初のわたしの作品を作り上げた



それは


ところどころが


ほつれて


縫い目が合わなくて


ピースがひとつ足りなかったけど





わたしはそれをとても気に入った



これがわたしが欲しかったおもちゃだと


気が付いた







そうして自分で作って見たら


これまで飽きてしまったものは


わたしじゃない誰かがその人の世界を表したくて


夢中になって作った



とても完成度の高いものだらけだったことに気がついた


山のようにあるおもちゃと同じものを


わたしは一つも作れない



わたしが作れるのは


わたしのおもちゃだけ





少し恥ずかしいような


ごめんなさいという気持ちになった後


おもちゃの山に向かって


ありがとうと


呟いた





今まで持っていたおもちゃたちは


わたしの遊び道具だったんじゃなくて


わたしの教科書として


ここにあってくれたんだ


ということにも気がついた






わたしはこれからたくさん


わたしのおもちゃを作ろうと思う


最初のつまらなかった気持ちから


自分で作って見たときの難しさと


夢中になって表現したい面白さ


そしてたくさんの先輩たちの作ったおもちゃを


知っていく学び



やることはたくさんあった


腕まくりをして



わたしは目を輝かせていた



自分の世界を表すものを作るのは


難しくて


面白くて


夢中になれる


一番楽しい遊び




たくさん作って


集まったら


わたしはきっと


ものすごく


いろんな気持ちが詰まった宝箱を


眺めるのだろう


どこにもない宝箱


わたしにしかできなこと



こうゆうことができるから

わたしはわたしが誇らしかったんだ



こうしてわたしは


生きている目的と


自尊心と


遊びと


そのほかたくさんの


自分の自慢になるものを




手に入れたのだった







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