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わたしは滝のような
光を浴びている
硬く結晶化した
一番純度の高い鉱物
または
万年雪の中で
長く長く保管されてきた
太古の水の結晶
または太陽の濃い光線が
集中的に集まったエネルギー
おおよそ並みの光の強さではないもの
硬く透き通ったカーンと響く音
鉱脈の中で
そんな光がコツコツと
増え続けている
新しいものをコツコツと
しかし確実に成長させ
結晶はだんだん大きくなっている
ホースから勢いよく出た水が
放射状にあたりに軌道を広げるように
わたしの光の柱も
硬く結晶化したものが
硬い岩に当たって
直線だったものが
放射状に広がり
育っていっている
あまりにも純度が高いものは
何をあてがうこともできない
コツコツと小さく切った細切れを
手にかけることはできるが
大きな柱そのものを
何かに活用したり
何かで装飾したり
することはできない
命の回路とは
そのようなものである
だから私たちは生きる中で
コツコツと小さく分けた命のかけらを
使っている
挨拶したり
歩いたり
話したり
買い物をしたり
本を読んだり
手を振ったり
喧嘩したり
旅をしたり
ものを作ったりして
コツコツと小さく分けた命のかけらを
使っている
わたしはコツコツとしたことも
割と得意で
自分の好きなやり方で
コツコツと
小さい命を使って生きている
これはなかなか楽しい
だけどわたしはこうして
立っているだけで
純度の高い光の柱でいる
何もしていなくとも
ただ光っている
そしてそれだけで
やる必要のあることは
全てが事足りている
他に特にやることもない
わたしのやることは
ただわたしがやることで
わたしがやること以外のことを
わたしはやる必要がない
あまりにも眩しいので
他の人がわたしと同じようにやることはできないし
そもそも眩しくて
わたしを目に入れなくていいように
違う方を向いている人もいるくらいだ
それはその方が目が守られるから
違う方を向いた方がいい
光の柱の結晶を
よく見ると
細い筋がたくさんあって
見る角度を変えると
透明だけじゃない
色々な色の反射が見える
ただ純粋なのではない
必ず作用があるところには
色がついた光がある
色とは意味
意味のある何かしらの行動や
物理的なものが
作用として残る
わたしが生きている結果は
物理的に表される
そうして少しづつ
現実にあらわれているから
わたしが生きていることがわかる
だけど
もしわたしを
あらわすものが
現実的になくても
わたしが結晶の光の柱ということに
変わりはない
ただ反射の色がついているか
ついていないか
の違いだけで
ここにはちゃんと
大きくて
立派な結晶の光が
ちゃんとある
だから心配することはない
どこにいても
何をしていても
結晶の光は
変わらずに
ずっとある
目に見えなくとも
触れられなくとも
ずっと
ここにある
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