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  • sunao

66




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わたしが歩いていく丘



わたしの前には道があり


これから歩いていく丘たちが見えている




高低差のある道を


トコトコと長く長く



歩いていく


天使だった頃は


宙に浮かんで


眺めていたら



すぐに通過できた距離も



人間だったら



歩いてトコトコ進むしかない






これは


わたしが



どんな風に歩いていくか


どうやって高低差のある道を進むか




人間として


何を感じ



どう味わって


進んでいくかの実験のようなもの






トコトコ歩くわたしの前には


平らな道じゃなく


上がったり下がったり




なだらかなだけでは無い道が続いている





わたしはこれをどう歩くか


足を出し


どのくらいの踏み込みで



どのくらいのスピードで


どんな道順で


何を眺めながら歩くのか






全てわたしの自由



だから


こうやって歩いているのは


わたしがわたしの人生の礎を築いていくことになる








歩くこと自体は


そんなに難しいことでも


大変なことでも無い




だけど


どう歩いて



どう味わうか


わたしなりのやり方を


作っていくのは




わたしにしかできない


大事なこと




体の勢いに任せて


なんでもできちゃうような気がするけど







わたしはわたしの正解の一歩を


選んで選んで


歩いて行かなくちゃいけない




それが天使だった頃には


できなかったこと





ただ大いなる意志のもとに


あちこちに瞬時に飛べていたときには



できなかったこと



ここで丘の道を歩きながら




サンダルに受け止められた足が

迷ったり



力強く進んだりすることは


天使の頃にはできなかった






こうやって勝手の違う「今」

を生きてみると


人間でいることは


わたしにとってすごく大事な意味があった




わたしが歩くごとに



丘の地形が変わり


わたしが感じるごとに



空気の質が変わり


わたしが経験するごとに



現実が創造されていった





こんなにリアルに感じられて



こんなに創造を目の当たりにすることができて



こんなに面白さがダイレクトに伝わってくるなんて


天使の頃にはなかった




歩き始めのわたしは


まだ自分が天使か人間かが


わかっていなかったが




こうしてしばらく進んでみたら

わたしが足を進めることに


目の前に広がる丘の連なりの


地形が音を立てて変わっていく様に


こんなに深く


こんなに強く


胸を揺さぶられている





わたしは確かに


人間だ



ゴゴゴゴゴ と


地面が持ち上がり




空が光り


わたしが歩く速度と連動して

わたしの歩く道が


編纂されていく





そして後ろには

わたしが歩いた後の道が



まるで


最初から完成していた




芸術品のように


力強く

うつくしく


輝いて


わたしを見送ってくれている





わたしの歩く道


わたしのために編纂された


わたしのための新しい道



歩いていくごとに


大陸の地形を


少しづつ


「今」に沿ったものに


組み替えていく



歩いていくごとに


大地の構成が


新しくなっていく





わたしが歩くごとに

ダイナミックな地殻変動が



自然に始まっていく




そこをわたしは踏み越えて




どんどん進んでいく




奇跡の足を


存分に使って



わたしは歩いていく





この素晴らしい



充実感も


人間になって




初めて知った




大事なきもち





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