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  • sunao

72



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わたしはDNAの不思議について



いつも心を巡らせてきた





シマウマの縞模様の間に



吸い込まれてしまう



果てしない生き物の情報の渦を


旅するような感覚




そんな風に


自分が生きていることや


生き物が作り上げられて行く



過程の不思議な厳密さへの


モチベーションがあった





わたしは知りたかった




自分が生きている理由や


生きていていいという証明や


どんな風に生きるのか




DNAに刻まれた

生き物の生態を知るように



自分が生きる道筋を知りたかった




どう生きるか


ということへの絶対の答えがあるはずだと


肌の感覚で信じていた





どう生きるのか

わたしは


自分の命の有様に





きちんと敵うように

生きているのか




そのことが知りたかった






ある時


わたしは気がついた





わたしがわたしの生きたいように


過ごしていれば


それが


わたしという個体の


命に敵う



真っ当な生き方なのだと


ついに知った








そのことを知った途端

わたしは自分の体が


まるで柔らかい樹木のように




ぐにゃりと


ひらけて行くのを感じた





自分の中に眠っていた情報たちが


今こそ使われる時だと





中から飛び出してきた







わたしは客観的に


自分の生き方の正解を知りたかったのだが





ここへきて


主観が自分の命の本流なのだと


雷に打たれたように


思い知った









わたしはわたしがやりたいように


生きる生き物だったのだ






わたしが思うがままに生きていれば


わたしはわたしという個体を




真っ当することができるのだ





主観とは面白いもので






自分を外側から観察して行動を決めていた時とは




全く違うように世界が見えた







例えば


蟻の行列を眺めている時







客観的に見ると


それは蟻の行列でしかなかったが




主観的に見ると




わたしには




数えきれないほど



大勢の仲間と




生きる力を共有している





羨ましい存在だった











象が長い鼻を振り上げる様も







客観的には


家族や同種への


挨拶のように見えていたが







主観的に見ると




象は大地の一部として生きていて


その「わたしは生きているぞ」


という感覚を



世界に表明しているように



感じられた












思うがままに生きているということは


いつも


自分が躍動的で




心がナビゲーターになっている状態だった





わたしは迷わなくなった




自分の行きたい方向が




わかる




この素晴らしい感覚を


心の底から喜んでいた







自分が地球の電波塔になり





宇宙へ向けて


わたしが進む道を


レーザービームで差し示す







わたしはわたしの進みたい先がわかる





まさにDNAの情報を


生きている状態だった





明るい水色のレーザービームを


宇宙にまっすぐ飛ばしながら


わたしはこれから自分が向かう先に


懐かしく手を振った




そこで待っている


未来のわたしが


こちらにビームを伝って


エネルギーを


送り返してくれた気がした





わたしよ


待っていてくれ



未来に追いつくからな






視野がどんどんひらけて行くのを


感じながら


わたしは


水色のビームを


宇宙にまっすぐ飛ばした





そして


重力から放たれて




スッと




宇宙へ


飛びたった







わたしはちゃんと


自分が生きていることを



たくさん許したのだった










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