わたしは
寝そべっていたい
わたしは寝転んで
好きなものを味わって
ただただ
ゆっくり
自分の感覚を楽しんでいたい
誰にも邪魔されず
この日の当たる床に座り
ただ体に太陽の光を浴びて
なんともなしに
思い巡らせることだけで
生きてゆきたい
わたしは
バターのお菓子に挟まった
砂糖の一粒のようだ
ただ浸透圧で
ゆっくりと溶けて
柔らかいものに
守られて
そうして
眠っていられたらいい
ある時
バターに挟まれて眠っているときに
わたしは夢を見た
わたしは
起きている時と同じように
柔らかいバターの毛布に包まれていたが
自分の気持ちを振り返って
よく観察してみると
ここを寝床にしはじめた頃と
心地よさの感覚は変わっていた
バターは気持ちいいが
身動きが取れない
バターは気持ちいいが
新しさはない
バターは気持ちいいが
何を触っても
バターの膜が付いてきて
わたしが触ったのか
バターが触ったのかが
わからない
わたしがそれを欲しくて触っているはずなのに
そのものに残るのは
バターの跡だけ
誰にもわたしが触ったとわからないのが
こんなにも寂しかったなんて
バターはわたしを気持ちよくしてくれるけど
わたし自身の自己主張を助けてくれるものではないのかもしれない
そう気づいてからは
なんとなくバターに包まれていることが
億劫になった
そして
わたしの中には
他の味わいがなかったのかを
丹念にチェックしはじめた
そして、
よく探したら
わたしは
自分の中に眠っている
真っ赤な
苺の
濃厚な
ソースの泉を見つけた
誰に教わるでもなく
わたしは
自分の中に
こんなに濃くて味わい豊かな
芳しいソースが
湧き出していると
知っていた
この泉は
勝手に湧き出していて
わたしにも止められない
カップで何杯も何杯も
受け止めて
なんどもなんども
汲んだけれど
だんだん増えて
わたしの体の中から
溢れかえって
あたりを真っ赤に染めた
遠くから見たら
きっとわたしの周りに
マグマが湧いているように見えただろう
芳しく
甘やかな
わたしのマグマ
ふんだんに
濃厚なエネルギーが
湧き出してくる
これに気がつかずにいたなんて
全く不思議なことだ
バターに包まれて寝ている間
わたしの中に
苺のマグマがあったなんて
どおりで
バターの優しさだけでは満足がいかないはずだ
なーんだ
わたしのマグマは
常に新鮮で
高い温度
湧き出続ける勢い
そして
甘やかな香り
とても豊かな
生きているエネルギー
わたしのマグマは
人に汲んで分けてあげられる
攻撃するようなものではないから
この苺の味の
美味しいソースを
人に分けてあげられる
汲んでも汲んでも
尽きないことは
体の感覚でよく知っている
わたしは
わたしのマグマを
赤い
甘い
そして
揺るぎない
苺のエネルギーを
ふんだんに出していくことにした
これは
一番わたしが
生きている中で
一番太いエネルギー
そこを使っていくことにした
わたしの中のマグマ
吹き出すような
喜びの気持ち
わたしが生きているということは
わたしの中を
流れ出てくる
マグマを
感じて
表現するということ
太いエネルギーを
誰にも頼まれなくとも
誰の役に立たなくとも
外に出すということ
マグマの流れていく先は
わたしからは見えないが
それでいい
わたしにはわからない方向に
熱く
力強く
伸びていく
マグマがマグマである限り
誰も邪魔することができない
地形に沿って
ふさわしいように
伸びて流れて
地平に
ご馳走を振りまいていく
かつて
エジプトでナイル川が
土地を豊かにしたように
わたしのマグマが
わたしの住む大地に
エネルギーと
情熱を
流し込んでいく
わたしの赤い
生きているパワーよ
わたしから産まれ出で
どこまでもゆけ
わたしはわたしの母になって
子供のわたしが
マグマと駆けていくのを
それをずっと
見守っているから
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