77
西王母のいる
空があった
雲を編んだような天への柱が
まっすぐに立っていて
西王母のいる場所まで届いていた
空の上に浮かび上がって
大きな姿をこちらに見せているので
それが誰なのかは
はっきりとわかった
わたしはいつも
見ているだけ
素晴らしいものや
価値のあるものを
わたしは
見ているだけだった
わたしはにこやかに
周りに対応していたが
本当のわたしは
いつも
わたしの中で眠っていた
西王母のいる空を見上げるときも
わたしの中にいるわたしは眠ったまま
遠くの方から
彼女がゆったり空に佇んでいるのを
見ていた
わたしは
そんな風に遠くから見ているだけだったが
密かにやっていたことがあった
それは
雲の柱のデザインを
細かく美しく
デザインを変えていくことだった
ただもやもやとした雲が
まっすぐ伸びているだけの柱では
つまらない
わたしは
雲に
赤い星の窓を開け
うす水色の雨の紐を垂らし
ひし形の綺麗な連続模様をつけて
ただの柱から
うつくしい細工模様にして
西王母の雰囲気に
似合うように
いかにも素敵なものが
この柱の先にありますよと
指し示せるように
きれいな柱に
整えた
その時だけ
わたしの中のわたしは
起きていた
わたしが本当に
良い
きれい
うつくしい
と思うものを
感じ
それを選び
デザインしている時
わたしは目を覚ましていた
わたしはわたしが起きている時間が好きだった
お腹の奥で
パチンと
目が開くような
すっきりとして
気持ちがいいから
そんな風に過ごす時
わたしは時間が止まったように感じた
時間が進むことがなく
いつまでも今の瞬間を味わっていることができた
わたしは
それが好きだった
雲の柱のデザインに満足したので
わたしはもう一つ素敵なものを
柱の付け根に
デザインすることにした
それは
中に
迷路のような模様が描かれている
丸い盤だった
雲の柱に備え付けて
エネルギーを流すと
その盤は
左右に分かれて
雲の柱の扉を開けて
登っていくことができる
目を閉じてイメージした
盤を
ポンと手のひらに表出させて
わたしはそれを雲の柱の
ちょうどわたしの目の高さのところに
手で張って押さえた
盤はちゃんと雲の柱の表面にくっついた
わたしは満足だった
わたしの中のわたしも
にっこりと笑って
出来栄えを喜んでいた
この時も
まるで時間の経過を感じない
「今」にいる時間だった
そのあとだった
わたしは何もしていないのに
盤にエネルギーが
パチパチと走って
雲の柱が
開いていた
わたしはあっけにとられれ
ぼうっとしていると
空の上の方で
西王母が
こちらを見ているのが
見えた
ますますびっくりして
体の力が一気に抜けた
そうして
脱力したまま
わたしは雲のはしらの中を
スルスルと登っていき
自分がデザインした
柱を内側から
眺めながら
だんだんと空の高いところまで
やってきて
ついには
西王母と同じ場所まで
登っていた
ここから見ると
世の中は
なんて素朴なつくりでできているんだろう
わたしの中のわたしと
わたしは
目を見あって
あることを考えた
「わたしが良いと思うデザインで
この世の中をうつくしいエネルギーに整えたい」
そのことを
西王母に伝えようと
振り返ると
何も言わず
西王母は
「思った通りに おやり」
とわたしの心に
声を届けてきた
わたしは
わたしの中のわたしと
一緒に
「ようし、一つづつやっていこう
たくさんたくさんやることがある
協力して
全部やろう」
とお互いに言い合った
わたしは
自分の中から
また時間の感覚が消えていくのを感じた
わたしが良いと思うものを
デザインしていくのは
とてもうれしいこと
このために
体があって
生きているんだなぁと
わかること
わたしは
どんなデザインを表出させようとも
健全な気持ちでいる
やり遂げよう
そう決めて
わたしは
わたしの中のわたしと
自分の仕事に
取り掛かった
生きているって
こういうことだ
起きているって
こういうことだ
わたしはとても
良い気分で
わたしの中のわたしと
目配せをした
Commenti