top of page
検索
  • sunao

98









98



竹やぶの中で 



わたしはすっくと立っていた




わたしは木々を映えさせる名人で


これまでこの山に



何本もの


竹や


楡や


楓や



楠や



そのほか


潔く


美しく


すっくと繁るものたちを


たくさん生やしてきた





山の表面に種が植わって



木の芽を出すのではない



木は


山の内側に


循環して貯められたエネルギーが



一斉に外に押し出されることで


芽吹き


幹が伸び


大木へと育つのだ






種だけでも


空気だけでも


土だけでも



水だけでも

それは起こらない





わたしという大いなる山が



この大地の奥深くから



うごめいて届けられる



生きている龍の動きによって



大きなエネルギーをもらい





それが蓄えられて




ちょうど良い頃に




ちょうど良い場所から




山のエネルギーを



表出させるのだ








わたしはその手腕に長けていて



わたしが生やす木々は



バランスよく



その場所にふさわしい木を



ふさわし数だけ



生やすことができた





龍との付き合いも長いので


大地の奥の方から



やってくる奴のエネルギーも



程よくわたしが受け取れるように



信頼関係の上で



やりとりされていた







わたしの役割は



木を生やすことだけではない





わたしはわたしという大きな山を貫く



地球の核と


宇宙をつなぐ


柱を立てることが


一番大事な役割だった




わたしは



柱を立てるときの


厳かさや


真剣さや


迷いのなさを


愛していた




愛していると




はっきり自覚できるほど



わたしの中では大事なことだった



そしてそれは

わたしの意思だけの作業ではなかった



地球の核から龍を伝って上がってくる線


そして天の上の方で

それを受け止める合意


通過するもの全てとの同調があって

初めて実現することだった




わたしの中を貫いて




天と地がつながること


そこに関わる全てが


合意のもとに


同調していること




それがあって初めて

わたしの柱は

たつのだった



草を揺らす勢い


空を貫く潔さ


繋がっているという盤石の体制



柱はそんな風に


鮮やかで


勢いよく


しっかりとした体制で


すらりと伸びていった





わたしは


こうやって


周りとの条件が


きちんと合わさっていくことが


とても性に合っていたし




合意のもとに


全てが揃うことも


大変すきだった




それは


宇宙の中をめぐる


いくつもの鍵穴が


全てピタリとハマるようなことだったし



貫通した瞬間に


それまで


少しでも乱れていたものものは


柱が立つことで

ダイナミックに調整が行われ


一瞬ののちに


全てが


必要なもののもとに


必要なだけおさまる





この柱を立てる能力は



わたしのいっときだけの能力ではない



わたしはわたしでいる間


ずっとこのことを愛し

繰り返しこの作業を


行ってきた



未来にも


過去にも


わたしが建てた柱はいくつもある



自信を持って


わたしはその柱たちを数え上げ


そしてそれが億を超えたところで


数えることをやめ




あとはただ



楽しんで眺めている状態になった



わたしはそのことがとても好きだったので



眺めていることも



ただただとても好きだった



わたしの満足げな様子が


また柱の色味をうつくしくし


天の方で


何かが喜んだように


きらりと瞬いた







わたしは満足していた











Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page