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竹やぶの中で
わたしはすっくと立っていた
わたしは木々を映えさせる名人で
これまでこの山に
何本もの
竹や
楡や
楓や
楠や
そのほか
潔く
美しく
すっくと繁るものたちを
たくさん生やしてきた
山の表面に種が植わって
木の芽を出すのではない
木は
山の内側に
循環して貯められたエネルギーが
一斉に外に押し出されることで
芽吹き
幹が伸び
大木へと育つのだ
種だけでも
空気だけでも
土だけでも
水だけでも
それは起こらない
わたしという大いなる山が
この大地の奥深くから
うごめいて届けられる
生きている龍の動きによって
大きなエネルギーをもらい
それが蓄えられて
ちょうど良い頃に
ちょうど良い場所から
山のエネルギーを
表出させるのだ
わたしはその手腕に長けていて
わたしが生やす木々は
バランスよく
その場所にふさわしい木を
ふさわし数だけ
生やすことができた
龍との付き合いも長いので
大地の奥の方から
やってくる奴のエネルギーも
程よくわたしが受け取れるように
信頼関係の上で
やりとりされていた
わたしの役割は
木を生やすことだけではない
わたしはわたしという大きな山を貫く
地球の核と
宇宙をつなぐ
柱を立てることが
一番大事な役割だった
わたしは
柱を立てるときの
厳かさや
真剣さや
迷いのなさを
愛していた
愛していると
はっきり自覚できるほど
わたしの中では大事なことだった
そしてそれは
わたしの意思だけの作業ではなかった
地球の核から龍を伝って上がってくる線
そして天の上の方で
それを受け止める合意
通過するもの全てとの同調があって
初めて実現することだった
わたしの中を貫いて
天と地がつながること
そこに関わる全てが
合意のもとに
同調していること
それがあって初めて
わたしの柱は
たつのだった
草を揺らす勢い
空を貫く潔さ
繋がっているという盤石の体制
柱はそんな風に
鮮やかで
勢いよく
しっかりとした体制で
すらりと伸びていった
わたしは
こうやって
周りとの条件が
きちんと合わさっていくことが
とても性に合っていたし
合意のもとに
全てが揃うことも
大変すきだった
それは
宇宙の中をめぐる
いくつもの鍵穴が
全てピタリとハマるようなことだったし
貫通した瞬間に
それまで
少しでも乱れていたものものは
柱が立つことで
ダイナミックに調整が行われ
一瞬ののちに
全てが
必要なもののもとに
必要なだけおさまる
この柱を立てる能力は
わたしのいっときだけの能力ではない
わたしはわたしでいる間
ずっとこのことを愛し
繰り返しこの作業を
行ってきた
未来にも
過去にも
わたしが建てた柱はいくつもある
自信を持って
わたしはその柱たちを数え上げ
そしてそれが億を超えたところで
数えることをやめ
あとはただ
楽しんで眺めている状態になった
わたしはそのことがとても好きだったので
眺めていることも
ただただとても好きだった
わたしの満足げな様子が
また柱の色味をうつくしくし
天の方で
何かが喜んだように
きらりと瞬いた
わたしは満足していた
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