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  • sunao

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わたしが好きなことは


大きく顔を開いて笑うこと



空の上の方から



朗らかなカーテンをなびかせて



薄黄色の風が吹くとき





わたしは自分の喜びのままに


幼さのままに



自分の楽しみなことを全部やるのが


すきだった






どちらを向いても


わたしの世界は

わたしの世界で


十分に面白く


豊かなものだった








そうした気持ちが入口になり



わたしは長く伝わる寺院の扉を開けることができた




全ての学びの始まりには



こんな風に


明るく



笑いが溢れるような


喜びがある






そのことをわたしは嬉しく思っていた




わたしは


遊ぶことが


わたしを生かすことで



学ぶことは


自分の歴史が残るようなことだと


知っていた








学ぶことよりも


遊ぶことを選んでいると


そのあとに


学びが残り





わたしが開いた寺院に

書物として



それらが残されていく



風通しのいい


日当たりのいい



この立派な堂のに



わたしが遊んだ記録が


おさめられていく





時間の区切りは

いつも短く




いくつかのシーンが


つなぎ合わされていくように



わたしの遊びはできていた





何かに没頭し


数秒したら


パチリと景色が切り替わり



また新しい遊びが始まる





それらがつなぎ合わされて


一続きのシーンになり



わたしは振り返って


そのシーンが語るテーマを聞き




ははぁ


これが真髄か




と、見つけたものが


サラサラと自然に記されて


書物になる






そうやって


わたしは遊びながら


多くのものを


記し残してきた





わたしは面白いことがすきだったから


例えば



あちこちに

鳴きながら走る

鶏を追うような




自分位は予測のつかないものに




自分の時間を使うことが




多かった




それが新しい世界の側面を





見せてくれるものだったから





これをやったら


何になる





わからないから


やってみて



そのあとの次第を見る


そうやって遊んでいた




わたしはそうやって遊びながら


わたしが学びを得るごとに


天の方で



何か大きいものが



集められていくのを感じていた




わたしが夢中で遊んで




何かを学ぶごとに




それに応じて



天の方で


大きな生き物が



だんだんと形成されていく




生まれて育つというよりも



わたしの学び一つ一つが



体のパーツの一つ一つと呼応し




輪郭からそのものが形作られていく




といった風に




わたしからは直接見えない



天の雲の上で



巨大な生き物が



呼び込まれているようだった




わたしが望んだことではなかったが




間接的にその生き物を


出現させていると知った時






わたしは


遊びの連続だった自分が





何か



宇宙の真髄に触れているようだと悟った








わたしが遊ぶごとに


宇宙の理が


巨大なものを形成し始める



そうしてわたしはいつしか


すっかりこの世での遊びをやり尽くし



寺院には


たんまりと書物が残り


もう満足




腹一杯






全てをやり尽くした






もう何も悔いはない





すっかりやり尽くした



心地よい隙間が



わたしに風をそよがせた




その時だった



雲がさぁっと開いて


光が差し



これまでついぞ見ることがなかった


天でにいた巨大な生き物が



わたしの方へ顔をのぞかせた





それは


柔らかな若竹色をした


大きな大きな首長竜だった






巨大な首長竜は



わたしと瞳を合わせ


わたしに意識を通じあわせた




首長竜は


その体が船室のように



乗り込める作りになっていて





時期が来たから



わたしを迎えに来たことを



告げた




わたしは



満足した心地でいたから



その挨拶を


喜ばしいものとして受け止め




肯定の返事を返した




そして



ふわりと体を脱ぎ捨てると



首長竜の中に乗り込むために



宙に浮いて




首長竜に挨拶をした




私たちは


お互いが


お互いを作り


育てあったものだと


よく知っていた





わたしを止めるは


今までも


これからも


何一つなかった







わたしは吸い込まれるように


緑の背から

首長竜のなかに入り



これから私たちが向かう先へ

穏やかな気持ちで


思いを巡らせた





私たちは


ゆっくりと空を旋回し



宇宙の軸へ軌道を向けて


移動を始めた




わたしはこのように



わたしを運ぶ運命があることに


深く幸せを感じていた




わたしは宇宙に



ゆっくりと




戻っていった



わたしが遊んだことは



永遠に残る



軽やかな学びとして



書物に収められている




安心した気持ちで


宇宙への運行を始めた





わたしは満足だった






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